礼拝メッセージ(2019年10月6日)

『 マリアは月が満ちて 』 ルカによる福音書 2章:1~7節  牧師 林健一

この世界に生まれてきてくださった主イエス・キリスト 
 今日からいよいよイエス様の誕生について読んでいきます。私たちの救い主イエス様の誕生をルカはどのように描いているのでしょうか。
 2章1~2節には次のようにあります。「そのころ、皇帝アウグストゥスから全領土の住民に登録をせよとの勅令が出た。これは、キリニウスがシリア州の総督であったときに行われた最初の住民登録である。」この皇帝アウグストゥスという人ですが彼はユリウス・カエサルの養子であり、彼の後継者として内乱を勝ち抜きローマ帝国の初代皇帝となった人物です。そして彼は、広大なローマ帝国を強力な軍事力で統治し、また豊富な財政で帝国内の公共サービスを充実させ、「パクス・ロマーナ」(ラテン語でローマの平和という意味)と呼ばれるローマの平和を実現した人物でもありました。新共同訳で「住民登録」と訳されている言葉は口語訳では「人口調査」と訳されていましたが、ユダヤ人に住民登録させる目的は主に税金を集めることにありました。「住民登録」による徴税は帝国を維持する一端を担っていたのです。平和の時代を人びとは楽しみ、この平和は彼のおかげだと信じ、アウグストゥスを〈全世界の救い主〉と呼びました。そして神と崇めます。皇帝アウグストゥスの誕生日が〈福音〉と呼ばれました。「この神の誕生は、彼を通して全世界に福音が伝えられた始まりを記した」という賛辞が送られました。私たちの主イエス・キリストの福音というのと同じ言葉です。〈よき知らせ〉という意味です。
 ですがイスラエルにとって、ローマによって占領された国々とって〈よき知らせ〉となったのか。少なくともイスラエルの人々、ヨセフ・マリヤ・この世界に誕生したイエス様には〈よき知らせ〉にならなかったのです。平和という名のもとに多くの人たちがローマの支配に苦しんでいました。そのただなかに私たちの主が生まれてきてくださったのです。
 ここで「全領土の住民」と訳されている言葉ですが、今日「エキュメニカル」という言葉をキリスト教ではよく聞くと思うんですけど、「エキュメニカル」という言葉が出てきた語源です。「人の住んでいる世界」およそ人が住んでいる世界全体という意味です。K先生はこの「エキュメニカル」についてこの言葉の語源となった「オイクメネー」(一般に世界と訳される)は「ローマ帝国の世界をも意味し、また神さまの裁きが向けられる領域としての世界ですが、同時に、福音が宣べ伝えられる対象、すなわち宣教の領域としての世界であると」言われました。
 私はK先生のメッセージに深く感動しました。私たちが生きている世界は神さまの裁きが向けられると同時に福音によって救われる世界でもあるのだと。私たちは信仰によってこの世界に希望を持って歩んでいきたいと思うのです。