礼拝メッセージ(2023年2月12日)
『 イエスを殺すには 』 林健一 牧師
ルカによる福音書 22章:1節~6節

22章 01節:さて、過越祭と言われている除酵祭が近づいていた。

22章 02節:祭司長たちや律法学者たちは、イエスを殺すにはどうしたらよいかと考えていた。彼らは民衆を恐れていたのである。

22章 03節:しかし、十二人の中の一人で、イスカリオテと呼ばれるユダの中に、サタンが入った。

22章 04節:ユダは祭司長たちや神殿守衛長たちのもとに行き、どのようにしてイエスを引き渡そうかと相談をもちかけた。

22章 05節:彼らは喜び、ユダに金を与えることに決めた。

22章 06節:ユダは承諾して、群衆のいないときにイエスを引き渡そうと、良い機会をねらっていた。

ルカによる福音書 22章:1節~6節(新共同訳)
 
 ルカによる福音書は第22章からいよいよ、主イエス・キリストの受難、十字架の死の話になります。2節に、祭司長たちや律法学者たちが、主イエスさまを殺そうと考えていたとありますが、そのことは既にこれまでにも繰り返し語られていました。2節に「イエスを殺すにはどうしたらよいかと考えていた」ありますが、それは、殺したいのだがどうしたらよいのか、なかなかそれを実行に移す機会がなくて困っていた、ということです。なぜそれを実行できなかったのか、その理由はその後に語られている「彼らは民衆を恐れていたのである」ということです。主イエスさまは民衆に人気があったのです。民衆の支持を失うことを恐れている指導者たちは、彼らの面前で主イエスさまを捕えることができなかったのです。

 主イエスさまをどうやって捕えたらよいか考えあぐねていた祭司長や神殿守衛長のもとに、主イエスさまの十二人の弟子の一人であった、イスカリオテと呼ばれるユダが行って、主イエスさまを彼らに引き渡す相談をもちかけたのです。ユダがなぜイエスさまを引き渡すことになったのか。いろいろな説がありますが、福音書記者のルカは「ユダの中にサタンが入った」と告げます。ユダの裏切りは、サタン、悪魔の力、働き、誘惑によって起こったのです。ここでは魔が差したとか、もう人間としては説明のしようがない、そういう出来事だとルカ福音書ではユダの行動を言い表しているのだと思います。ユダだけが特別な悪人ではありません。他の弟子たちも、そして私たちの誰でも、サタンに支配されてイエスさまを裏切る者となり得るのです。あれほど熱心にイエスさまの話しを聞いていた民衆たちもイエスさまを十字架につけろと心変わりしているのです。

 そのように主イエスさまの受難の話に具体的に入っていくのに際して、ルカが1節で確認しているのは、「過越祭と言われている除酵祭が近づいていた」ということです。この祭が近づいてくると共に、主イエス・キリストの受難への動きが加速していったことを、これはルカのみならず他の福音書も皆語っています。イエスさまはユダによって、宗教指導者に引き渡され、 後に彼らによってローマ兵たちに、そして総督ピラトに引き渡されました。イエスさまの十字架の死と復活によって神さまの救いの御計画が、サタンや当時の人間たち(宗教指導者たちや為政者たち)の思い、力、策略をも超えて実現したのです。