礼拝メッセージ(2025年12月21日)「民衆のために生まれた救い主」ルカによる福音書2章10~12節

人形劇:ロバとウシとヒツジが見た、あの夜のこと
ロバ)はあ……やっと着いた。ナザレからベツレヘムまで、長い旅だったなあ。マリアさんを乗せて、何日も歩いてきたんだ。
ウシ)よく来たね、ロバくん。そんなに長い旅をしてきたのかい。ここはぼくらの家畜小屋。いつも夜の間はここで眠るんだ。ロバくんも休んでくれ。
ロバ)ありがとう。とても助かるよ。
ウシ)ところでロバくん、今夜は何か特別なことが起きる気がするんだ。なぜだろう。
ロバ)ウシくんもそう思うかい? ぼくも感じるんだ。
(赤ん坊の泣き声、赤ちゃんのイエス様登場)
ウシ)わあ、赤ちゃんが生まれたね。
ロバ)もしかしたら、特別なのは、この赤ちゃんかもしれないよ。
ウシ)どうしてそう思うんだい? 普通の赤ちゃんに見えるけど……。
ロバ)実はね、旅をしている間に、マリアさんとヨセフさんが話していたのを聞いたんだ。「お腹の子は、神様の子どもで、みんなを救う人になるんだ」って。
ウシ)神様の子どもだって!? もしそうだったら、王宮にある豪華なベッドに寝かされるんじゃないかな。
ロバ)そうだよね。でも。この子はベッドじゃなくて、ぼくらが食べる干し草を入れる飼い葉おけに寝かされている。
ウシ)でも……なんだかわかる気がする。だってみんな幸せそうにこの赤ちゃんのことを見ているから。
ロバ)そういえば、この赤ちゃんは「インマヌエル」とも呼ばれるんだって。
ウシ)「インマヌエル」って、どういう意味?
ロバ)神様がいつも一緒にいてくださる、ということなんだって。
ウシ)へ~、そうか。この子がぼくらと一緒にいるように、神様もぼくらのところまで降りて来て、ぼくらと一緒にいてくれる。そう思うと、なんだかうれしくなるね。
(外から足音。ヒツジが駆け込んでくる)
ヒツジ)はあ、はあ! やっと着いた! 救い主がいるのはこちらですか?
ロバ)ヒツジさん、どうしてここがわかったんだい?
ヒツジ)羊飼いさんたちと夜の野原にいたら、突然天使が現れてこう言ったの。「こわがらないで。あなたたちみんなに嬉しいお知らせです。今日、救い主が生まれました」って。
ウシ)それで、ここまで来たのかい?
ヒツジ)うん。そのしるしは、「布にくるまれて、飼い葉おけに寝ている赤ちゃん」だったの。
ロバ)やっぱり……これは間違いないね。
ヒツジ)羊飼いさんは嬉しそうに言ってたよ。「神様は、王様や大金持ちのところじゃなくて、夜の野原で働く自分たちに、救い主が生まれることを知らせてくれた」って。
ウシ)王宮の豪華なベッドじゃなくて、家畜小屋の飼い葉桶に寝かされた理由が、少しわかった気がする。
ロバ)うん。この子は、みんなのために生まれた救い主なんだ。疲れた人も、貧しい人も、小さな子どもも、年をとった人も。
ヒツジ)わたしたち動物にだって、この喜びを分けてくれるほど近くに来てくれた。
(3匹で飼い葉おけの方を見る)
ウシ)この赤ちゃんが、みんなが待っていた救い主なんだね。
ロバ)神様が望むことを行って、みんなを救うために生まれてきた人。
ヒツジ)世界が平和になるために。わたしたちも、みんなも平和になるために。
3匹)だから今日は、うれしいクリスマス。メリークリスマス!
すべての民衆のために生まれた救い主
神の子であり、救い主であるイエス様は、飼い葉おけに寝かされました。そこには力も強さもなく、輝かしさや見栄えの良さもありません。家畜のえさ入れである飼い葉おけに、わらをベッドとして寝かされた赤ん坊。それは、当時の貧しい民衆の子どもと同じような姿でした。
イエス様の両親も、辺境の地であるガリラヤの中の小さな村・ナザレに住む普通の人たちでした。大工のヨセフとそのいいなずけのマリアは、イエス様の両親とならなければ、歴史に名を残すことはなかったでしょう。
皇帝からの勅令に振り回されて、身重の体で長旅を強いられたマリアとヨセフは、ベツレヘムで泊まるところを探すのにも苦労しました。しかし、そのようなときにも、そのようなときにこそ、神様は共におられるのだ、とクリスマスの出来事は語っています。
神様が選ばれたのは、皇帝でも、王でも、祭司長でも、大富豪でもありませんでした。社会的に見て、何も特別ではない普通の人々、むしろこの世の中では小さな存在でしかなく、生きることにも苦労する人々を、神の子の両親として選ばれたのです。
そのことは、羊飼いたちに天使からのお告げがあったことにも表れています。羊飼いたちは雇われの身分でありながら、命がけで野宿をしながら夜通し羊の番をしなければなりませんでした。力もなく、自由もない。そんな羊飼いを選んで、神様は救い主の誕生を伝えたのです。
「恐れるな。わたしは、民全体に与えられる大きな喜びを告げる。」(ルカによる福音書2章10節)
天使はこのように言いました。救い主の誕生は、民全体に与えられる大きな喜びでした。救い主はほかでもない、あなたがたのために生まれたのだ、と天使は言ったのです。この世では小さな存在で、生きることにも苦労している人々、力も自由もなく、それでも必死に生きようとしている人々。そのような人々のために――あなたがたのために――救い主は生まれたのだ、と。
イエス様がお生まれになった時代は、ローマ皇帝を頂点として、絶望的な格差が作られ、多くの民衆は何重もの重荷を負わされていました。争いや暴力も絶えず、命の危険も隣り合わせでした。今の日本や世界でも、格差は急激に拡大し、苦しさは増し加わっています。争いが続き、命が踏みにじられている国や地域がいくつもあります。
そんな世界の中に、神の子・救い主であるイエス・キリストは生まれ、飼い葉おけに寝かされています。先の見えない闇の中にも、希望を失いそうになる混沌の中にも、イエス・キリストは降って来られた。そんなときにも神様は私たちと共にいて、重荷を共に担ってくださるのです。
羊飼いの前に現れた天の大軍は、神様を讃美して歌いました。
「いと高きところには栄光、神にあれ。地には平和、御心に適う人にあれ。」(ルカによる福音書2章14節)
神様の栄光と、地上の平和はつながっています。この世界が平和になること、私たちが平和に生きられることが、神様の御心です。そのような御心の実現のためにお生まれになった救い主がイエス・キリスト。私たちのために、すべての民衆のために生まれた救い主です。だから私たちも、このクリスマスを喜びます。このクリスマスに現わされた神様の御心が、この世界で実現することを祈りつつ、希望をもちながら、新しい年も主と共に歩んでまいります。
牧師 杉山望
※このホームページ内の聖句は すべて『聖書 新共同訳』(c)日本聖書協会 から引用しています。
(c)共同訳聖書実行委員会 Executive Committee of The Common Bible Translation
(c)日本聖書協会 Japan Bible Society , Tokyo 1987,1988
参考書籍・サイト
『現代聖書注解 ルカによる福音書』F.B.クラドック、日本基督教団出版局、1997年
『イエス誕生の夜明け ガリラヤの歴史と人々』山口雅弘、日本キリスト教団出版局、2002年
※イラストACからの画像

