礼拝メッセージ(2019年10月13日)

『 あなたがたのための救い主 』 ルカによる福音書 2章:8~12節  牧師 林健一

天使は言った。「恐れるな。わたしは、民全体に与えられる大きな喜びを告げる。(2:10

 天使が羊飼いたちに語った最初の言葉でした。天使は神のメッセージを告げます。「大きな喜びをあなたがたに告げる」。「福音」伝える。それは英語では「グッド・ニュース」です。この言葉がもとになって「god-spell」(よい音信)ゴスペルになりました。しかし、「福音」=「ゴスペル」という言葉は、もともとはキリスト教用語ではありません。昔古代のヘレニズム世界で使われていた一般用語でした。

 王様が生まれたとき、戦争の勝利を告げるとき国全体への良き知らせとして使われていた言葉なのです。つまりその知らせが待ち望んでいた人にとって「良い話」であるかそれが大切なことでした。

 現代の私たちの「福音」「ゴスペル」はどんなことを言うのでしょうか?就職活動をしている学生にとっては、会社が決まったという知らせが「福音」でしょう。また主婦にはバーゲンセールの知らせが「福音」であるかもしれません。パチンコ好きなサラリーマンにはよく玉の出るお店を知ることが「福音」であるでしょう。人にとって「福音」となるものはそれぞれ違います。

 しかし、ここで御使いが語る「福音」は「民全体に与えられる」。それはその当時の人々だけでなく過去から現在そして将来に至るまで「すべての人々」にとっての「福音」となる「良い話」が与えられたと言っているのです。

良い知らせとは何か

 では、神が私たち人間に与えられた良い知らせとは何の知らせでしょうか? 救い主がお生まれになった。あなたがたのためにキリスト(救い主)が与えられたというメッセージです。

「今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになった。この方こそ主メシアである。」(2:11 「あなたがたのために」と羊飼いたちに御使いは告げました。それは羊飼いだけに限定されるということではありません。イスラエルの民、全世界の人々のために救い主がこのときにお生まれになったということなのです。

喜びの知らせはすべての人に伝えられる。

 この喜びの知らせは、老若男女すべての人に与えられる良い知らせなのです。クリスマスの喜びの知らせを最初に伝えられたのは羊飼いたちでした。

「その地方で羊飼いたちが野宿をしながら、夜通し羊の群れの番をしていた。」(2:8)

一般に羊飼いというと、私たちは牧歌的で平和な印象を受けがちです。しかし、イエス様の時代のイスラエルの羊飼いの実態というのは、昼夜を分かたぬ、きわめて過酷な労働であっただけでなく、当時の社会における最底辺の職業のひとつであったといわれます。そんなふうに軽蔑されていた羊飼いのもとに神は天使を遣わしたとルカ福音書は伝えています。このことをとおして神は私たちに何を語ろうとしているのでしょうか。神の招きは無条件にすべての人に開かれているということなのです。

証としての幼子イエス

 その証として幼子イエスがしるしとして羊飼いたちに与えられました。神が救い主キリストを知ることができるように与えられたしるしは誰もがわかるものでした。マタイ福音書のなかでは三人の博士たちには星、そして羊飼いたちには「布にくるまって飼い葉桶の中に寝ている乳飲み子」どうして神はこんな単純でばからしいと思うようなしるしを与えたのでしょう。これこそ「あなたのためのキリスト」として与えた証です。